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いつでも腐女子日和

腐女子な管理人が送る、腐女子発言多々の日々のつれづれ。

ダラダラ……

今日はお昼過ぎまでグダグダと寝て過ごし、起きてからは溜まったビデオを消化して、そして積み上げていた漫画をようやく読み切りました。
これで心置きなくスラダンが読めますぞ。

昨夜は定例の「オヤジ劉備愛好会」の絵チャに参加してきて、無謀にもリアルタイム小説を実行してきました。う~ん、頭の瞬発力ですね。しかもなぜか内容が孫乾×伊籍。
いやっほ~~、マイナー大好きv

さてさて、それでは頭を使う作業をもう少し。
お題へ行ってみましょうか。






   「支配する者される者」


「おぉうい、許チョ~」

 傍らを歩く男の名を呼ぶ声を耳にして、曹操は足を止めた。合わせるように、名を呼ばれた男も足を止めた。しかし、呼ばれたはずの男は声の主を振り返ろうともしない。

「許チョ~」

 曹操はちらり、と傍の男を見やってから呼び続けている声の主を探した。
 探せば、道の反対側。田畑が並ぶそこを突き抜けるように走っているあぜ道の、曹操が立っているところから畑を挟んださほど遠くないところから、その男はこちらへ手を振っていた。

「呼んでおるぞ」
「はい」

 曹操が言えば、呼ばれた男――許チョは返事をするが、やはり呼んでいる男へ見向きもしない。

「知り合いではないのか」
「恐らく、私が住んでいた村人の一人だったと思います」

 姿も見ていないのに、許チョははっきりと答える。許チョが村を離れてもう十数年が過ぎている。それでも、すぐにどこの者か分かったのだ。世話になった人物なのだろう。

「私のことは気にするな。会いに行ってやれ」
「しかし、丞相をお守りすることが疎かになります」
「お前だけが私を守っているわけではないだろう」

 生真面目に答える男に、曹操は小さな苦笑を浮かべる。
 今は地方の視察巡回の真っ最中だ。許チョだけでなく、地方役人や土地の兵たちも周りにいる。何よりこの辺りは許チョと出会った場所に近く、治安も安定しているところだ。
 許チョが心配するようなことは起きない。

「先に戻っている。お前は後から追い付け。何なら、一晩暇を与えてもよい」
「いえ、そういうわけには。……後から追います。申し訳ありません」

 律儀に礼を取り、許チョはようやく村人に向き直り、足早に駆けていった。その後ろ姿は珍しくも弾むようで、旧知の友に出会った喜びに溢れていた。

「あのような許将軍の姿、私は初めて目にしました」

 驚いた様子で、隣に立っていた文官が言う。
 ほとんどを無愛想に、もしくはぼんやりとしている許チョの姿しか知らないのだろう。

「私も久しぶりに見た」

 口の中だけで呟き、なぜか少し苦くなる。

「行くぞ」

 その苦さに我に返り、曹操は促した。視察はまだ残っているのだ。今日の宿舎に辿り着くまでに見回りたいところは山ほどある。
 ちらり、と後ろを見やれば、いつになく寛いだ様子で知人と話をしている許チョの横顔が目に入り、曹操は口の苦さに顔を僅かにしかめた。

   ※

 予定通り今日予定していた視察を終え、改善点を竹簡にしたため終わった曹操は、ゆっくりと伸びをした。

「許……、そうか」

 許チョ、と呼ぼうとして、未だに帰ってきていないことを思い出し、曹操は肩を竦めた。
 許チョの代わりに警護している男を呼んで、茶を頼んだ。しばらくして運ばれてきた茶を口にして、曹操は眉をひそめる。

「温い」

 ここまでの行程で、酒や女にはそろそろ飽きている。そもそも執務の一環なのだ。あまり羽目も外せない。こういうときは熱いお茶を飲んで寝るのが曹操の習慣なのだが。

「面倒くさいな」

 頼んだ相手が許チョでないことを失念していた。許チョなら何も言わずとも曹操の望んだものを用意している。しかし頼み直すのも面倒だった。諦めて寝ようかとも思うが、習慣を省くとなかなか落ち着かない。
 どうしたものか、と思案すると、部屋の外から聞き覚えのある声がした。

「丞相、ただいま戻りました」
「入れ」

 許チョだった。その片手には盆があり、上には湯気を出している茶器が乗っている。

「任務を放棄して申し訳ございませんでした」
「気にするな。それよりもそれは?」
「はい、帰り際、知人から茶葉を。とても美味でありましたので、無理を言って分けてもらいました」

 受け取り、口を付ける。しっかり、熱めのお茶で、風味も損なわれることなく口に広がっていく。

「美味いな」
「はい」

 微笑んだ許チョの顔をしげしげと見やり、曹操は言う。

「お前の笑った顔など、久しぶりに見たな」
「そうでしょうか」

 途端、戸惑ったようにする許チョに、曹操はそうだ、と首を縦に振る。

「昔馴染みにあって、寛いだせいか?」

 だとしたら、やはり悔しいな。
 別れ際に口の中に湧いた苦さが、茶の風味と共に曹操の咽元を落ちていく。
 人を支配することに慣れていた。だから、麻痺していたのだ。心から従わせ、その者を自分だけの存在にすることがどれだけ大変なことなのか。

「そうかもしれません。知人にも言われました。変わったな、と」
「どのように?」

 昔ほど闊達でなくなったとか、そういう類だろうか。だとしたら、それは悲しい。

「昔はその、恥ずかしい話ですが風に流されている、宛所の無い葉のようだった、と。ただ日々を生きるだけに満足していたのに、今は違う、と申しました。あるべき場所、根を張る場所を見つけた大木のようだ、と」

 その知人が言うには、ですが。
 そう言って、許チョは照れ臭そうにした。

「無表情でいることが、か?」

 少し意地悪く問うてみる。

「はっ? あ、ああ……、申し訳ありません。どうもこういう顔つきでして、真剣になればなるほどそういう顔つきになるようです。昔、典韋に笑われたことがありました。その反動でぼーっとしているように見えることもあるようで。中間がないようです」

 ますます照れ臭そうにする許チョを見て、曹操は段々可笑しくなる。

「そうか、そういうことか」

 はっはっはっ、と曹操はひとしきり笑う。

「丞相?」

 支配したつもりでも、分からないことはたくさんある。
 配下のことだけでも一喜一憂するのだ。この世はなんと広いものか。
 何やら楽しくなってきた。

「お前、今私が何を考えているか分かるか?」
「いえ、私には丞相のお考えなど到底」
「それがいい。そのほうが世の中面白い」
「はあ……」

 熱いお茶を口に含めば、香り高い風味と甘さを、曹操へ届けてくれた。



 終わり



 ***

 一応、吉川風で。支配する者でありながら、されている者に揺れ動かされる。そんな繊細曹操さまで。



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