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いつでも腐女子日和

腐女子な管理人が送る、腐女子発言多々の日々のつれづれ。

今さらですが

前回の日記のとおり、見事ゲーム落ちしておりまして、
おいおい、もう日付は9日だぜ?
てな具合ですが、
本来なら7日の七夕に合わせて投下するはずだった小話を入れ込んでおきます。

てか、小話のつもりがだいぶ長くなったのはなぜか。

とりあえず、とあるための練習を兼ねて、今回は初の現代パロというか、
DLCであるところの大徳工業編でお送りします。
でも他の学校も出てくるけどね!

そういえば、以前ちょっとお話したツバメは、
元気に巣を作り終わって、ただいま卵をあっためているようです。
今のところは、まだ2羽同時にしか見かけなくなり、
もしやあれは派遣社員的な?
とかますますなぞは深まっております。

さて、折り畳みより大徳工業(他学校含む)七夕小話です。





「お待たせ、疾風弾……じゃなかった。笹だよぉ」
 大徳工業の校庭に、陽気な声が響き渡ると、校舎の中で作業していた生徒や教師が一斉に外へ飛び出してきた。
「おお、でっけえのを見つけてきたじゃねえか!」
 歓声を上げたのは張飛で、見事であるな、と頷いたのは関羽だ。
 褒められたので、えへへ、と照れているのは、語尾が尻上がるしゃべり方をする、笹だよぉ、と知らせた男、馬岱だ。部活で使っている自転車の脇に笹を括りつけて、運んだのだ。しかも、従兄である馬超のバイクに根元を結び付け、引っ張られるように運んできたのだから、二人の息が合っていないと不可能な離れ業だ。
 馬超はしかし少しばかり不服そうだ。
「俺はもっと大きな物が良い、と言ったのだが、馬岱がこれ以上大きいと運べない、と文句を付けたのだ」
「だってそうでしょうが。これだって、カーブする道は大変だったんだから。若はもっと考えて選んでよね」
 いつもの従兄弟のやり取りをよそに、張飛と関羽はさっそく校庭を掘り返し、笹を埋める穴を作ると、せいの、と息を合わせて笹を立てた。
 関平や関策、鮑三娘から歓声が上がる。
 凄いものだな、とのんびりした声は劉禅のもので、星彩はその隣で小さく頷いている。
「さすが馬超殿と馬岱殿です。お疲れ様でした」
 遅れて出てきたのは、「やる気元気勇気」のたすきを斜めにかけた大徳工業の生徒会長、諸葛亮だ。羽扇を片手に校庭に突き刺さった笹を細目で見上げる。
「孔明様」
 つなぎ姿の月英が後ろから現れる。
「月英、例の物は間に合いそうですか」
「はい、先ほど完成いたしました」
「さすが月英ですね」
 微笑む諸葛亮は、用務員姿のホウ統へ小さく頷いてみせた。
「ほいほい、あっしの出番だね。じゃあ、関平殿や関策殿、鮑三娘のお嬢さん、あっしと一緒に飾りつけ、手伝ってくれるかい」
「はい、お任せください」
「もちろんです」
「あたしが可愛~く、デコってあげるから、見ててね、関策!」
 張り切る鮑三娘の横で、ホウ統は折り紙を細く切った物を輪にして、器用に次々と繋げていく。
「これが本当の連環の計だねえ」
 タオルの下で、ふっふっふ、と笑っている。
「劉禅様、私たちは短冊の用意をしましょう」
「ああ……そうしようか。みな、これに何を願うのだろう、な」
「劉禅様はどのような?」
「ん、私か? 私は別に願いなどないぞ」
 星彩が感情の起伏が乏しい顔に、仄かに意外そうな表情を浮かべた。
「そうなのですか?」
「おかしいか?」
「いえ、そういうわけではありませんが」
「そういう星彩はどうなのだ。願いぐらいあるのだろう」
「私は……そうですね、私も特には。叶えたいのなら、自分の力で叶えたいです」
「ふふ、星彩らしいな。では二人で、父のこの学校から無事に卒業できますように、とでも書いておくか。私は暗愚ゆえ、卒業できるかどうか、危ういのでな」
「……私は劉禅様のお言葉がどこまで本気なのか、時々分からなくなります」
 などと話しているが、二人の手はせっせと動いている。
「諸葛亮殿」
 校門から大声で生徒会長を呼ぶ男がいた。シャーロックホームズもかくや、という出で立ちの男で、頭髪や鬚は白いが、実に元気の良い足取りで歩いてくる。
「黄忠殿、いかがでしたか」
「おう、こんな商売をしているのでな、顔は広い。だいぶ集まりそうじゃぞ」
「それは良かったです」
「魏延も手伝ってくれたしの」
 黄忠の後ろに隠れるようにしている、覆面をした魏延は頷いた。
「我……黄忠ノ手伝イ……ヤッタ」
「え~、なになに? 魏延ってばお手伝いしてくれたわけ?」
 いつの間にか傍に来ていた馬岱が混ざってきた。
「凄いねえ。嬉しくなるよぉ」
 にこにこ笑う馬岱が、ねえ、諸葛亮殿、と振れば、どう言葉をかけて良いか迷っていたらしい諸葛亮も頷き、ご苦労様です、魏延、と労った。
「我、劉備ノタメ……頑張ッタ」
「さ~て、わしらも飾り付けの手伝いでもしようかの。ほれ、魏延、行くぞ」
 俺もやるよ~、と馬岱も後に続いた。
 見送った諸葛亮は、さて、と夕暮れの空を仰いだ。
「趙雲殿と姜維は、案ずるまでもなく上手くやっているでしょうから、私は晴れ乞いの祈祷でもしましょうか」
 校舎の、屋上に続く階段へ、生徒会長はゆったりと歩いていった。


 劉備は落ち着きなく、貧乏揺すりをしていた。
「ご安心ください、殿……ではなかった、校長。諸葛亮殿が万全の策で準備を整えていますから」
「そうです。丞相……じゃなかった。会長の策は水も漏らさぬ完璧さです」
 趙雲に、姜維が強く同意して劉備に安堵を与えようと言葉をかける。しかし、劉備はうむ、と生返事だ。
「趙雲殿、やはり校長は他校の七夕飾りを見て、相当ショックを受けておられるのでは」
 こそこそ、と姜維は劉備に聞こえないように、趙雲へ耳打ちした。
「確かに、鳳凰学園の七夕飾りは感服したが、校長は諸葛亮殿を信頼しておられる。いまさら不安に駆られるようなことはないと思うが」
「しかし実際に、曹操理事長が用意してくれたリムジンに乗った先ほどから、ずっと落ち着かないご様子」
「いや、もしかしたら、この高級車のせいで落ち着かないのかもしれない」
「まさか」
「関羽殿から聞いたことがあるが、校長は昔、高級車に乗って遊びに行くような身分になりたい、とおっしゃったらしい」
「では、思わぬ形でこのような車に乗ってしまい、動揺しておられると」
 ちらり、と二人は揃って向かいの劉備へ視線をぶつけたが、いつもは「なんだ?」とすぐに気付いてにこり、と微笑む校長は、ソワソワと外を眺めたまま膝を揺らしていた。
 劉備たちを運ぶリムジンの後ろには、同じように鳳凰学園が用意したリムジンが三台続いていた。それぞれのリムジンには、鳳凰学園、陽虎学園、天命館の理事長と生徒会長が乗っている。
 四台はまっすぐに大徳工業へと向かっていた。外はすっかり夜であった。
 コンクリートで出来た校門の前に、滑るようにリムジンが止まる。運転手がすかさず降り、扉を開ける。
 護衛役の趙雲と、大徳工業の生徒会長代理である姜維が先に降り、劉備を待つ。
 降り立った劉備は思い切り伸びをして、いやあ、とようやく笑った。
「高級車というものは、落ち着かないものなのだな。すっかり肩が凝った」
 二人は顔を見合わせて、目を瞬いた。
 どうやら、ただ乗り慣れない車に緊張していただけのようだ。劉備らしいといえば劉備らしい。
「そういえば、趙雲殿、時間は」
「ああ、大丈夫だ。諸葛亮殿に言われた通りの時間は稼げている。姜維が上手くそれぞれの学校で話を引き伸ばしてくれたおかげだ」
 後ろに止まったリムジンからは、次々と理事長と生徒会長が降りてくる。
「さて、諸葛亮が姿を見せなかった理由、とくと拝見させていただこうか」
「うむ、まったくだ」
 天命館理事長、司馬懿が不機嫌そうに言えば、陽虎学園の生徒会長である周瑜が頷いた。
「のお、劉備。関羽はどこじゃ、関羽は!」
「父よ、今日の目的は関羽ではないはずですが」
 目を輝かせる鳳凰学園理事長の曹操へ、生徒会長の曹丕が冷たく言い切った。
「大トリの劉備殿の七夕祭り、拝見するぞ」
「大徳工業の力、量らせてもらう」
 陽虎学園の理事長、孫堅と、天命館の生徒会長、司馬師が続いた。
「しかし、随分と暗いではないか。本当に準備は整っておるのか」
 曹操が疑念を投げ付けた途端、すぅっと校門の奥から諸葛亮が姿を現した。
「皆さま、ようこそ、大徳工業へ。生徒会長を務めております、諸葛孔明です。四校で競う、七夕祭り飾りつけコンテスト、恐れ多くも大トリを任されました、我が大徳工業。その誉れに相応しいご用意をしてございます、さあ、どうぞ校庭の真ん中までお進みください」
 恭しくお辞儀をした諸葛亮は、羽扇で校門の先を示した。
 曹操が興味津々で真っ先に足を踏み入れ、その後を孫堅がゆったりと、司馬懿が警戒しながら進む。生徒会長はそれぞれの理事長に従っている。
「諸葛亮、ご苦労だったな」
「いえ。劉備殿こそ、慣れない高級車でだいぶお疲れの様子ですね」
「はは、さすが臥龍。なんでもお見通しだな」
 趙雲殿も姜維も、ご苦労様です、と諸葛亮から労われて、二人は会釈で返した。
 他校の理事長たちが中ほどまで進んだことを確認し、諸葛亮は「月英」と闇の中へ呼びかけた。「はい、孔明様」と声が返り、スイッチと小さなモーター音が聞こえ、辺りが仄かに明るくなった。
 闇に慣れた目では中々光の正体に気付かなかったが、正体が分かるや否や、歓声が上がる。
「蛍か」
「懐かしいの」
 孫堅と曹操が目を細める。籠に入った無数の蛍たちが小さな虎戦車で運ばれてくる。諸葛亮がぱちん、と指を鳴らせば、再びスイッチの入る音がして、籠の上部が開き、蛍たちがふわふわと飛び始めた。
「これは、幻想的だ」
「ふ、やるな」
 周瑜と曹丕が感嘆した。
 蛍の明滅する光で、校庭の中央に飾られた笹が浮かび上がった。
「なんだ、普通の飾り付けではないか」
 鼻で笑う司馬懿に、近くまで寄って短冊を覗き込んだ司馬師は、父上、と呼んだ。
「この願いを書く短冊、生徒だけのものではありません。恐らく、この近所に住む者たちも書いています」
「なんだと?」
 司馬師の言葉に、他の面々も集まってきて短冊を覗き込む。
「我が校は、地域の皆さまから愛される学校ですので、祭りの際はこうして近所の方も参加されるのです」
 もちろん、黄忠と魏延の広報活動のおかげも大きい。
「地域社会に溶け込んでいる、というのは加点対象じゃの」
「俺のところみたいに、開拓して学園を建てると、中々難しいんだ」
 曹操と孫堅が頷く。
「どうですか、皆さまも願い事を書かれていっては」
 諸葛亮の誘いに、そうだな、と各人が思い思いに筆をとり、願い事を書き付ける。
「はいはーい、俺の出番だねっとぉ」
 どこからか馬岱の声がして、ほい、と掛け声が上がった途端、各人が書いた文字が短冊より抜け出て宙に浮く。
「なんと面妖な」
 司馬懿が驚いたところで馬岱が笑う。
「俺のちょっとしたかくし芸ってね。普段は絵しか形に出来ないけど、今日はちょっと特別な日だから、特別な仕様だよぉ」
「えーっと、関羽が欲しいって、これは曹操殿ですね。だから雲長はあげません、と何度も申し上げているでしょう」
「良いではないか、願いは願いだ」
「曹操殿、その願いをずっと叶えることはお断りいたしますが、今だけ、ということでしたら少々お付き合いいたしましょう」
 苦笑しながら現れた関羽は曹操へお辞儀した。本当か、と飛び上がって喜んだ曹操を、まるで子どもですな、と曹丕が呆れて眺めている。
「曹丕殿も、あまり人の事はおっしゃれませんな」
『葡萄が一年中食べられますように』と浮き上がっている文字を読んだ司馬懿へ、一度死ぬか、と本気としか思えない迫力で曹丕が台詞を吐いたので、一瞬にして司馬懿は闇夜へ消えた。
「父上、母上に一度は勝ちたい、というこの願いはこの師、見なかったことにいたします」
『弟の、めんどくせ、という言葉が減りますように』と書かれた文字の下で、司馬師は真顔で呟いた。
「理事長は『家族が元気で長生きしますように』ですか」
「はは、やはりちょっと平凡すぎるか?」
「いいえ、そのようなことはありません。私も似たようなものです」
「『学園が末永く繁栄しますように』か。出来た生徒会長だな、周瑜は」
 それぞれの願いが蛍の淡い光に照らされて、そして消えていった。
「さて、皆さま。それでは少々頭上へ目を向けていただけますでしょうか。この大徳工業、最大の目玉が見えるかと思います」
 諸葛亮の言葉に、みなが夜空を見上げると、ため息のような声が漏れたあと、しばらく無言だった。
 こぼれ落ちてきそうなほどの、星空だった。
 大きく体をくねらせている天の川が夜空の端と端を結んでいる。
「今宵、対岸に位置する彦星、織姫が一年に一度かけられる橋を渡り、再会を喜ぶ日です。どうぞ皆さま、祝福を」
 田舎の、空気が澄んでいるからこそ、いまの時代でもこうまでくっきりと天の川が肉眼で捉えられ、大きな笹も近所の山から用意もできるうえに、蛍も生息している。
「我が校の、自慢の行事の一つだな」
「ええ、校長」
 大徳工業の校長と生徒会長は、ここに学校を建てようと決意した日と同じ夜空を見上げながら、しばらく星の瞬きを眺めていた。


 おしまい


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