サイトのほう、またまた再録ですが、更新しております。
もう発行してから２年弱経とうとしていることに
ちょっと驚いています。
アンケートを取ったのなんか、２年前の１１月ごろですからねえ。
というわけで、関羽×劉備の再録をしてあります。
未読の方がいらっしゃいましたら、どうぞ。
本日は久しぶりの何も予定の無い休みでして、
ひたすら原稿の見直しです。
交地合わせ、１冊目のトトロ本はＢ６という小さいサイズながら
６８Ｐという、お前、パロディ本なのに書きすぎ、という代物になりました。
せっかくなので、折り畳みで少しだけ晒しておきます。
また正式にいつものところへ上げときます。
さて、２冊目の見直しはもう少し経ってからしようと思うので、
とりあえず３冊目、珍しく最後に回した劉備受けに何となく手をつけました。
書けそうな感じになってきましたが、
今回は珍しくページ数制限を設けてみまして、
自分的には色々とチャレンジしている本になる予定です。
冬コミの動向で正式発表、というか、そんな感じです。
がたごと、と揺れるトラックの荷台は前の家から運んで来ている荷物で一杯だ。その隙間に身を寄せ合うようにして曹操と夏侯惇は居た。とっておきのおやつであるキャラメルを取り出して夏侯惇に渡すと、六歳下の従弟は嬉しそうに頬を緩ませた。
曹操は荷物の隙間から身を乗り出して、助手席に乗っている荀彧へキャラメルを差し出す。
「文若、食べるか」
「お心遣いは嬉しいのですが、私は甘い物があまり好きではありませんから」
相変わらずあっさりとしたものだ。美味いのに、といつものお決まりのやり取りを終えて、曹操は荷台へ体を引っ込ませた。
曹操が、従弟の夏侯惇と養い親である荀彧文若、三人で前の家を引き払い、新緑の色も濃くなってくる季節に引っ越してきたのには訳がある。もう一人の養い親である郭嘉が病弱で、療養している病院に少しでも近くなるため。また、体に少しでも良い環境に住まわせたい、という曹操と荀彧の考えが一致したせいだ。
あぜ道を走ったトラックは、小さな川の脇に止まった。狭い荷台に長い間押し込められれば、まだ子供の夏侯惇と、歳のわりに小柄である曹操だけだったとしても、窮屈なのは確かだ。荷台のヘリを掴んで鉄棒で体を回す要領でくるり、と飛び降りた。
小川にかかる味気ないコンクリートの橋も、曹操の目には新しい土地へ招いてくれている招待状だ。橋の真ん中で小川の中を覗けば小さな魚が光を反射してキラ、キラ、と輝いている。
両側から張り出した木々のせいで、まるで樹木のトンネルとなっている小道を駆け上がれば、日本家屋と洋館が身を寄せ合う大きな家が、これまた大きな庭の真ん中に建っていた。
ここが、三人の――いや、戻ってくる郭嘉も含めての四人の新居だった。
「凄いボロ屋敷じゃ」
「ボロー」
近寄れば、塗装が剥げているし、バルコニーの藤棚を支える柱は腐りかけている。思わず言えば、曹操の後を追いかけ、真似するのが好きな夏侯惇が叫ぶ。
だが、気に入った。
夏侯惇を見下ろして、にこり、と笑う。あはは、と夏侯惇も大口を開けて笑い返した。
「気に入っていただけたようですね」
雨戸を開けている荀彧が、そんな二人の様子を見て言った。
「気に入ったぞ、文若。良い所を見つけたな！」
声を弾ませて駆け寄ると、開け放たれ、光が差し込んだ部屋の中に反射するものを見つけた。靴を脱ぐのももどかしく、膝を使って畳の上に乗り上げて、光を弾いた物を摘み上げる。
「どんぐりじゃ」
どんぐり、と後ろで夏侯惇がはしゃぐ。見たい、見たいよ、操兄、と声を張り上げる。視界の隅にまた見つけ、そちらも拾い上げる。なぜ、誰も住んでいない家の中に真新しいどんぐりが落ちているのだろう。
文若、とどんぐりが落ちていることを告げると、おや、と細いフレームの眼鏡を押し上げて荀彧が首を傾げる。
「リスでも住み着いているのでしょうか」
『リス！』
曹操と夏侯惇の声が揃う。
「もしくはネズミでしょうか」
「ネズミはヤダ」
夏侯惇が唇を尖らせた。リスがいい、と重ねて言う。曹操も、ネズミよりは断然リスが良かったが、荀彧が鍵を取り出してきたので受け取った。
「主公」
荀彧は曹操のことを名前でなくてそう呼ぶ。曹操も昔から呼ばれていたせいか、おかしなこととは思わないが、どうやら少し変わっているらしい。しかしそもそも養い親が二人居て、父と母ではなくて、父二人、の時点で自分の家族は変わっているのだ、と曹操は幼い頃より悟っていた。
我ながら、どんなだ、とつっこみたくなってきた（笑）。
荀彧（と郭嘉）は養い親です。
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