どうやら無事にふた茶の入稿受理もしてくれたようで、
あとはインテ合わせの新刊に専念するだけです。
今回、ほぼ全編に渡ってシリアスになりそうで、
ちょっと悔しい思いをしていますが(大げさ)、
7からは通常運転に戻れるかなぁ、なんて気の早いことを考えています。
ちなみに現時点での構想でいくと、絶対に20冊ぐらい行くと思います。
ふた茶も大概、10年計画で終わらない代物ですが、
こっちも長くなりそうな感じですよねえ。
わはわは。
そして、今回の更新で久しぶりにひと月に二桁更新できました!
昔はちゃんと「日」記だったんですけどね。
そんな記念、というわけではありませんが、
やはりお題に挑戦してみよう、と思います。
結局、お気に入りのお題サイトさんは、引越しをしただけで、
あとで見つけたんですが、
その前にもう一個、ここは素敵、というお題サイトさんを見つけたので、
そちらから借りました。
こちらです→
原生地さまで、お借りしたお題の性質上、あえてお題の主題となっている部分と、
10個のお題のタイトルを最後に明かす、
というほうが面白そうなので、
今回はどんなお題で挑むのかあえて隠して挑戦します。
いま現状は、カップリング未満なお話で、普段あまり書かない二人組で行きたいな、
と考えていますが、突然、話が思いつかないで変える可能性もあります。
以下の通りです。
張繍と賈詡
親衛隊と曹操
曹丕と司馬懿
趙雲
馬岱と龐徳
徐庶
馬岱と魏延
曹操と袁紹
劉禅と諸葛亮 もしくは 姜維と諸葛亮
呂布と陳宮
の予定で10個のお題に挑戦したいと思いまっす。
最近、個人的にまったく(時間がないために)書かなくなった二人組とか、
有名な組み合わせなのに中々見かけない二人組とか色々です。
馬岱の組み合わせのところと曹丕のところ以外は、創作三国志になる予定です。
まあ、曹丕と司馬懿のところも、年齢差は史実に基づいていつも書いているので、
無双準拠ではないんですけど、5から年齢不詳になっているから、無双かも。
ん? ということはいまの水魚シリーズってもしかして無双準拠って言ってもやっぱり
いいんじゃないの、ということにいま気付く。
あと、今回はわりと切ない系で書く予定にしていますので、
ハッピーエンド主義の方はお気をつけください。
というわけで、さっそく今日は「張繍と賈詡」で行きます。
気になる方は折り畳みよりお願いします。
不満などあろうはずがない。
元からそうして世の中を渡ってきた。
策を与える相手が変わろうとも、己がすることはただ一つだ。
この頭から溢れてくる形のない智慧を、言葉と言う道具で形作り、手渡す。手渡した後は、使うもの次第で、結果がどうなろうとも気にしたことなどなかった。
おかげで、己の頭の中身の価値はだいぶ上がったらしく、道具など、使ったもの次第だというのに、与えただけの己まで随分と悪評が立ってしまった。
困ったな、とはさすがに少々思ったが、それだけだった。
使い勝手が良く、便利な道具は、どれだけ世間が認めようとせず、嫌おうとも、使いたがるものは居るものだ。
事実、目の前の男がそうだった。
あまりの悪評と、与えた相手同士が争い始めた関係で、居場所が無くなった。困ったものだ、とさして困り顔でもなく思い、世の中から一端身を隠すように地方の小さな町で役人の真似事をしてその日暮らしを始めた。
ところが、どうやって見つめたのか知らないが、己を必要だ、と言った男がいた。
それ見たことか、といささか得意な気にすらなり、いくら評判が悪かろうとも、こうして使おうとするものは後を絶たないのだ、と己を詰る声々に言い返したくなった。
「構いません。貴方にお仕えいたしましょう、張繍殿」
「そうか! 来てくれるか、賈詡!」
嬉しそうに笑った顔が、まるで童子のようだ、と思って、知らず小さく笑んでいた。
そんな、特別に記するほどでもない始まりだった今の主であり、己の道具を与える相手であったが、これまでの相手と比べればやや勝手が違った。
かつての相手たちは、始めのうちこそは己の生み出した道具に喜び、称賛を贈ったが、次第に恐れの滲んだ眼差しで差し出した道具を見つめるようになった。特に多少使い勝手の悪い道具を出したり、または使い手次第となってしまう道具を生み出したときには、態度を変え、罵ってきさえした。
どちらが悪いかなど、決まっているというのに。
道具は所詮道具なのだ。あとは使い手次第だ。
なぜそれが分からない、と謗りを浴びながら内心で呆れていた。
だというに、今の主ときたらどうであろうか。
「その策は素晴らしいな。すぐに実行しよう!」
「さすがは賈詡だ。見事に成功したぞ!」
屈託なく己の道具を褒め称え、笑う。
かと思えば。
「すまない、その考えで行くと、どうなるのだ」
「分からんなあ。お前の考えていることは難しすぎて、俺には理解できぬことが多い。つまり、どういうことだ?」
道具の使い方が分からない、と素直に尋ねてくる。
それを一つ一つ教えることで、己自身さえも気付かなかった穴に気付き、再度道具を作りなおすこともあった。
また、こんなことも言われた。
「だが、そのようなことをしたら、その後はどうなる。大丈夫なのか」
「そうすると、もしや向こうは大変なことになるのではないのか?」
道具のもたらす結果やその先を示してきた男に、身をつまされる思いをした。
今まで、道具を生み出したあとのことには、使うもの次第だ、と関せずの考えだった。しかし目の前で、道具を見つめて悩む男を見ていると、違うのかもしれない、と考え直すようになった。
道具は使うもの次第。
道具は生み出したものとて、その行く末を見守る必要があるのかもしれない。
「張繍殿は、不器用な方ですね」
言うと、首を傾げて不思議そうな顔をした。
「私の生み出した道具を中々上手く使ってはくださらない」
「道具、とは?」
「私の智慧、策略のことです。私は道具、と呼んでいます」
「道具……。そのように考えたことはなかった。賈詡が私に話して聞かせる智慧や策は、私にとってはこの先の見えづらい世の中を歩くため、暗い道を照らしてくれる月のようなものだ」
真顔で返されて、思わず噴き出した。
何がおかしい、と再び不思議そうな顔になる男へ、いいえ、と澄まして返す。
「随分と詩的な表現をされるものだな、と思いまして」
「似合わぬことを言ったか」
いいえ、とまた首を横へ振った。今度は微笑みながら、今までに覚えたことのない柔らかい気持ちで答えた。
「貴方らしい、と」
「そ、そうか?」
照れた顔が可笑しくて、また小さく噴き出して、さすがに男は機嫌を損ねてしまったらしく、賈詡、と怒鳴ってきた。
不満など、無かったのだ。
あのときまで。
道具が人を照らす月だ、などという言葉を聞くまでは、己の道具がどう使われようとも、誰に使われようとも、まったく構わなかった。
だから、張繍へ「降伏」という道具を生み出して渡したときも、気に留めなかった。
分からなかったのだ、またしても己は、その道具が生み出す結果がどうなるか、などと。どうしても、考え至らなかったのだ。
預かった張繍が、悲しげに目を伏せたのは、降伏、という前回とは違い、今度こそ本当に相手へと膝を折る策だと知り、悔しく、悲しかったのだ、と思い違いをした。
曹操に降伏し、許都で今度は曹操のために道具を生み出し、渡す。
曹操は的確に道具を使いこなし、理解を示し、使ったあとのことも良く承知をしていた。かつてないほどの己の道具の使い手だ、と感じた。
だというのに、この胸に去来する虚しさはなんだろうか、と自問する。
夜道を歩きながら、ふと明るくなった空を見上げ、嗚呼、と呟いた。
私の策は、本当にただの「道具」となってしまったのか。
あの空に輝く月ではなく、あの人の先を照らす灯りではなく。
私はただ――
――彼の行く道を照らす月でありたい
そう願っていたのだ。
もう、傍で笑うことのなくなった男の顔を思い浮かべて、賈詡は静かに、再び暗くなった道を一人で歩き出した。
おわり
お題「彼の行く道を照らす月でありたい」 より
というわけで、張繍と賈詡でした!
サイトにも一本収録してある、二人の話の、またちょっとだけ違うバージョンでしょうか。
やっぱりねえ、君主と軍師の組み合わせうまうまですw
[5回]
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