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いつでも腐女子日和

腐女子な管理人が送る、腐女子発言多々の日々のつれづれ。

リベンジ

今度こそ、母&父の日プレゼントを買えました。
しかし給料日前、ということで全部クレジットだけどね(笑)。

基本的に私の財布はいつでもニコニコ現金払いがモットーのお財布なのですが、時折活躍するようです。スイカもね。

ついでに夜が遅かったので外食。それもなんだかノリで私のおごりになり、今日はいつになく散財。二万は越えた? あぁ、決済日が恐ろしい。

そんな休日でしたので、お題をやろうかな(関係なし)。





   「誓い立て」



 目をこする。
 それから頭を揉む。
 いつもこのぐらいになると痛み出す、憎らしい頭痛だ。

 疲れが溜まっているのは分かっている。ここ最近は激務だ。激務を激務とも思わない曹操であったが、その曹操にしてもそう思うほどの煩雑さだった。
 周りの人間も精一杯やっているし、むしろ周りの人間がこうも優秀でなかったら、当に曹操も音を上げていただろう。それでも、睡眠時間は最低限で、食事すらままならない。
 こんなとき、恐ろしい考えが曹操の底から湧き上がろうとして、その恐怖に身を震わす。

『どうしてわしがこんなに苦労をしているのだろうか』

 迷ったわけでも、嫌になったわけでもない。自分自身で望み、選び、もぎ取った地位であり、目標だ。
 だからこそ、そう考えてしまう自分が恐ろしくなるのだ。
 疲れているせいだ、と言い聞かせ、気休め程度にしかならない頭を揉み解す行為をやめて、また書簡に手を伸ばした。
 しかし限界だったのだろう。
 治まったかのように思えた頭痛がぶり返り、耐え難い痛みになって曹操を襲い、低く呻いた。目の前が歪み、視界が闇に閉ざされていくのを見た。
 それが、曹操の最後の記憶だった。



 次に気が付いたとき、ゆらゆらと体が揺れているのが伝わった。体が重く、まるで自分のものではないかのように動かない。
 目を開けることさえかなわず、辛うじて外界からの情報を伝えてくるのはその一定の揺れと、聴覚が拾うサクサク、という音だった。

(馬か)

 どうやら自分は誰かに担がれて馬に乗せられているらしい。泥を全身に被ったように、明晰に働かない頭でそれだけ理解した。
 その規則正しい揺れと、暖かで広い誰かの背はひどく曹操を穏やかにさせる。浮かんだはずの意識がまた緩やかに眠りへ落ちていくのにさほど時間は必要ではなかった。


 次に気が付いたとき、鼻をくすぐる香ばしい匂いがした。香草が入れられた煮出し飯のようで、曹操は腹の虫と共に身じろぎした。

「ああ、起きただなぁ、曹操さま。ぐっすり寝ていたからもう起きなくなっちまうんじゃないかと、ちょっと心配だったぞ」

 のんびりした、親しみを感じる特徴のある声。聞き間違えるはずもない。

「虎痴?」

 いつも呼んでいる愛称を口にすれば、すっと瞼が持ち上がった。
 一瞬、自分がどこにいるのか分からずに何度か瞬きを繰り返した。

「どこだ、ここは? わしの執務室……ではないな」
「当たり前だぁ。ここはお城からちょ~っと離れたところにあるのっぱらだぞ」

 楽しそうに許チョが説明する。
 青々とした草が目に痛く、頬を撫でる風が曹操の中に残っていた眠気を運んでいく。背中には堅い幹の感触がして、上を見上げれば葉の隙間から日が落ちている。

「何をしているのだ?」

 いまいち状況が把握できず、曹操はぼんやりと聞く。

「ご飯を作ってるだよ。もう出来るからちょっと待っててくれぇ」

 柔らかい頬が嬉しそうに持ち上がり、大きく太い指が器用に鍋をかき混ぜている。
 説明する許チョの前には、確かに曹操を目覚めさせた香草入りの煮出し飯(雑炊)があった。いつもながら綺麗な釜戸が作られており、鍋も使い込まれたいい色をしている。

「出来ただよ。あっついからな、気を付けて食べないとダメだぞ?」

 渡された器には、湯気を立てたトロトロに煮込まれた飯が艶を放っていた。思わずごくり、と唾を飲み込み、冷ますのもそこそこに口に入れた。

「おいしいだか?」
「……は、ふっ、うむ、美味い……」
「そうか、それは良かっただぁ」

 器に盛られた分はあっという間に腹に消え、おかわりを申し入れて、ようやく曹操は我に返った。

「確か、わしは執務室にいたと思うのだが……。そうだ、それで誰かに馬に乗せられて。虎痴、お前か?」

 状況的にはそれしか考えられない。
 またモリモリと飯が盛られた器を受け取り、かっ込みながら尋ねる。

「そうだぞ。曹操さまがあんまり無理するから、みんながおいらにどっかに連れて行けって言うんだ。だから、おいらは曹操さまをおんぶして、散歩だ」

 なるほど、と曹操はそれで全てを察する。
 過労で倒れた曹操は、下手なところへ寝かせてしまえばまた政務をし出すだろう、いうことで無理やりこんなところまで連れ出させたのだ。

「すぐ戻るぞ」

 器を置いて立ち上がろうとした曹操を、許チョが余りある力で押し留める。

「ダメだ。ご飯は落ち着いて、しっかり食べて、それからゆっくり休まないと体に良くないだ」
「しかしだな」
「曹操さま、ご飯を食べないと力が出ないんだぞ。知らないのか?」
「そんなことは知っておる」

 むっとして言い返すと、

「だけど、最近曹操さまがご飯を食べているところをあんまり見ないだよ。だから倒れるんだ。みんながどれだけ心配したか、曹操さまは寝てたから知らないだよ」

 珍しく許チョも怒ったように言い返してきた。

「おいらだってずっと心配してたんだぞぉ」

 言葉に詰まる。

「曹操さまが倒れたら何にもならないってことぐらい、おいらにだって分かるだよ。だから、曹操さまは少し休むだぁ」

 許チョの真剣な顔に、曹操は折れる。
 話を聞くに臣下がみなで送り出したのだ。しばらくは休んでいても大丈夫だ、ということなのだろう。

「分かった。わしは腹が減っているからな。おかわりするぞ」
「大丈夫だ、たくさん作ったから何回でも出来るぞ?」
「ああ、そうする。お前の作る飯は美味いからな」

 そう言って褒めると、許チョは嬉しそうに頬を緩めた。それから少し照れ臭そうにして、おずおずと言い出した。

「おいらも食っていいか?」
「もちろんだ」

 可笑しくなって曹操は笑いながら頷いた。許チョはぱぁっと顔を明るくさせて、自分用の特大の器を取り出してよそう。それから、いただきますだぁ、と一礼して勢いよく食べ始める。

「おいおい、わしの分は残しておけよ」

 呆れながらも笑みがこぼれる。

(幸せそうな顔で食べおる)

 ふと思う。こんな世でなければ、許チョはこうして毎日ご飯を作り誰かに振る舞い、そして笑顔を振りまいていたのだろうか、と。

「ああ、早く執務に戻らんとな」
「曹操さま!」

 頬にご飯粒を付けながらも、許チョが睨む。

「違う違う。もちろん休む。休むがな、早く治世を迎えれば、お前とこうして楽しく飯を食える時間が増えるのだな、と思ってな。そうなると、早く執務がしたくてならなくなる」
「大丈夫だ。曹操さまなら出来るだよ。おいらはそれまでちゃんと曹操さまを守るし、ご飯も作るだよ」
「ああ、そうだな。わしはお前のその笑顔のために頑張るとする」

『わしがこのために苦労をしているなら、それも良い』

 許チョの頬に付いていたご飯粒を取りながら、散歩日和の誓い立て。



 おしまい



 ***

 曹操様視点で無双バージョンです。
 無双許チョでご飯ネタは外せませんv


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