もそもそ、原稿やっています。
進み具合は……あまり良くない、と断っておきます。
なにせ日々の生活送るので精一杯、という感じで、
休みの日にせいぜい1~2時間パソコンへ迎えれば万歳、みたいな。
そんな感じです。
でも、気分転換になっていて、書いていると楽しいので、
これはこれでいい感じです。
あとに憂いを残さないよう、ひとまず馬岱受け本、
うっすくてもいいので出せるよう、そちらを現在進行中~。
それが終わり次第、曹操受けに取り掛かる予定です。
岱ちゃん受けは、ほんと書いていて楽しいですね!
劉備とか曹操書いているときとはまた別の、
こう萌えの赴くまま、というか。
自分で書いているくせに「はぁあん、岱ちゃんかわゆ~~いvv」
とかなり幸せなことになっています(笑)。
曹操受けは、TGSでの試遊の様子などを股聞きすると、
陳宮がほんと面白そうで、出したくなってきています。
本来のプロット上では、まったく出る出番なかったんですよね。
いや~、どうしようかなあ~~。
そんな感じで日々過ごしていますが、ひとまず、お題を投下しておきます。
今回は3つ目ですね。
曹丕と司馬懿の場合、です。
一応、創作ベースなんですが、なにせ曹丕スキーになったのが無双なので、
どうしてもそっちに引っ張られてしまうので、
まあ無双ベースと言っても差し支えないのでしょうか。
ひとまず、どうぞ!
「曹丕と司馬懿の場合」
望まない仕官であった。渋って逃げて断り続けたが、ついに強引に召し出されてしまった。そんな相手の息子だ。そもそも初めは良い印象を抱いていなかった。
「仲達」
抑揚のない声で呼ばれ、はい、と返事をした。
表情の乏しい面容で、双眸だけが鋭く光っている。そんな青年だったが、意外にも司馬懿の教えには従順で、乾いた植物が降った雨を喜ぶように、吸収していった。今とて、呼ばれて隣に回れば、先日教わった場所の違う解釈を考えたが、どうだろうか、というものだった。
「……なるほど。初めて聞きました解釈ですが、十分に頷けます。いえ、むしろ面白い。そうなると、こちらの解釈も変化し、また違った意味を持つことになりますから」
今日教える予定だった書簡を引き寄せ、何度も頷きながら青年と二人で新しい解釈の辻褄を合わせていった。
「面白い、面白いですね、子桓様」
「そうだろう」
普段は平淡な声音の青年も、興奮した司馬懿に釣られてか、喜色を滲ませていた。
表情の読みづらい、若者らしからぬ態度に、初めは取っ付きにくい男だ、と難儀していた司馬懿だったが、すでに付き合い始めて半年。感情の吐露が薄かろうとも汲み取れるまでには、相手のことを理解してきていた。
「子桓様には驚かされること幾たびです」
曹操の長子、曹丕へ称賛の言葉を漏らすと、しかし青年は再び能面のような顔付きに戻り、そうか、と返すだけだった。
「……私は逆に、お前のような男がどうして今まで在野に居たのか。そちらのほうが驚くがな」
今までだったら無愛想な相槌が打たれてお終いだったが、今日は思わぬ言葉が続き、司馬懿を再び驚かせた。
「お前の兄はすでに仕官し、だいぶ功績を上げているそうじゃないか。聞いたところによれば、司馬の八達などと呼ばれるほど、兄弟共々優秀らしいな」
「そのようです」
「随分と他人事のような口振りだ。才を持ち腐れしていても構わないのか?」
思わず、くすり、と笑う。なんだ、とばかりに曹丕の眼差しが鋭くなった。
「いえ、やはり主公と親子なのだ、と思いまして。唯才を求め、惜しむ考えをお持ちのようですね」
「……私は、惜しんでいるわけではない。ただ、兄や他の弟たちに追い抜かされ、悔しくないのか、追いつこうと思わないのか、そういう気概をお前は持っていないのか、を知りたかっただけだ」
半年の付き合いで分かったことがある。
曹丕は、父親である曹操の背中を必死で追いかけている。そして、長子であるがゆえに、弟たちから追いかけられる焦りも同時に持っている。
それは気の抜けない日々であろう。表情が薄いのも、感情を吐露しないのも、付け込まれる隙を作らないための彼らしい処世術なのだ。
分かってくれば、悪かった印象も次第に薄れ、むしろ必死さすらひた隠そうとする男に惹かれる自分に気付くのだ。
「生憎と、私はそこまでの気概は持ち合わせておりません。むしろ、この国に、と申し上げましょうか。私はこの国は死に体だと考えております。沈む船に乗り込んで共に沈む物好きにはなれません。ですから、私の才を必死で注ぐ気がなかったのです」
正直に、仕官を拒み続けた理由を説明すると、曹丕は珍しく呆気に取られた顔をした後、くっくっく、と忍び笑った。忍び笑う、と言っても、男が声を漏らして笑うことすら珍しいのだ。
「確かにこの国は、立ち枯れた老木に無理矢理水を注いで生き永らえさせているようなものかもしれない」
笑いを治めた男は言う。
それでも、支えるのがこの男の父と、そしてこの男であるのなら、もしかしたら老木は息を吹き返すのかもしれない。
そのとき、老木に水を与える手助けをしているのが自分であったのなら、面白い。
近頃の司馬懿は、そんなことを考えていた。
まだ、共に沈むには早いでしょうに。
自身が老木と化すには早すぎるでしょうに。
「仲達」
といつもと変わらない抑揚のない声は、力を失って平淡なだけだ。
「陛下、どうされましたか」
見舞いに来ていた司馬懿は、病で弱っている男へ呼びかける。表情の乏しい面容も、その中で炯々と光る双眸も、久しく目にしていない。
「水を……」
「はい、お持ちしますよ」
侍女に冷えた水を持ってくるように命じる。
「水を」
「今しばらくお待ちを。持ってこさせます」
小さく、男は頭を振った。
「ようやく、老木より生まれ変わった若木だ。育つには、お前の力が必要だ」
水を、水をやり続けて欲しい。
その瞬間だけ、男の瞳に力が戻り、男と二人、切磋琢磨していた若い頃の思い出が蘇った。
「子桓様」
「水を……」
「御意に」
答えると、曹丕は静かに微笑んだ。
付き合い始めて長くなった司馬懿にとって、初めて目にした安堵したような、重い荷物を下ろしたような、そんな笑顔だった。
刹那に感じた。
――私は、この国に降る雨ではなく、重圧に潰されそうになりながらも必死で立ち続けた、そのお心にこそ、恵む雨となりたかった。
そう告げたのなら、きっと男は笑うだろう。
今のように静かに穏やかな笑いではなく、いつかの時のように、くっくっく、と忍び笑うのだ。
答えはなんであろうか。
『嬉しいことを言う』
などと言ったら、死に際の戯れ言にしては気が利いている、と自分も笑うだろう。
『らしくないことを言う』
と言われたら、まったくですね、と同じように笑うだろう。
ただ、その答えを求めるには、すでに少しばかり遅かったようで、司馬懿は苦笑する。
「死んだ後の楽しみを残してくださるとは、陛下も随分とお優しくなったものですね」
ゆっくりと臣下の礼を取り、司馬懿はしばらくその姿勢のまま動こうとしなかった。
おしまい
お題「彼の心を潤す水でありたい」より
すっかり時間がなくなってこの二人を書く機会を逸していますが、
こうやって書いてみると、馴染んでいる、というか、
書きやすい二人組みだなあ、と思ったりしています。
[1回]
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