さてさて、両親も無事に戻ってきて、私自身も車検、健康診断無事に終了。ペーパーも作り、明日のイベントを待つばかりです。
忙しかった一週間が明日で締めくくりでございます。しかぁし、やはりというか案の定というか、小説が全然進められませんでしたorz
来週は少しだけ休み多めだし、がんばるぞ。
やはりサイト改装は8月の中旬(早ければ上旬)にもつれ込みそうです。うぅ、早くオープンしたい……。
さて、では恒例のお題です。今回はまたちょっと長くなっています。明日も、イベントから帰って気力があればお題をこなしますので、うまくすれば明日で桃園三兄弟のお題も終了しそうです。
ではではどうぞ。
「打ち明けられた悩み」
俺は今まで、兄者を守るため、または雲長の兄者を立てるため、どんなこともしてきた。俺はそれが俺自身の役目だから、と気負いが全くなかった、とは言い切れねぇけども、当たり前のこと、と思っていた。
だから今回、諸葛亮が言い出した案を、兄者たちが少しでも嫌そうな素振りを見せたのなら真っ先に声を上げようと思っていた。
ところが、予想を裏切るように、兄者も雲長兄者も黙って頷いただけだった。
俺はちょっと……うんにゃ、かなりがっかりして肩を落とした。何せ、そんな役目以前に、諸葛亮の案は俺自身が嫌だ、と思ったからだ。
「ちょっと待てよ、諸葛亮」
だから俺は自分の気持ちを正直に口にした。
「どうされました、張飛殿」
「それ、その話、他に何か手はないのかよ」
俺が迫っても、いっつも落ち着き払っている諸葛亮の野郎は顔色一つ変えない。
「他とは?」
今も涼しい眼で俺を見つめ返してきた。
「だから、雲長の兄者以外に、ここに残しておける奴はいねぇのかって言ってんだ」
「いません」
はっきりと言い切った諸葛亮を、俺は睨み付けた。
「関羽殿以外に適任はおりません。ここ荊州がどれだけ我々にとって要の地であるか、貴方にもお分かりでしょう」
「そりゃ、分かってるけどよ。だけど雲長の兄者がここに残ったら……」
俺たちはバラバラになっちまう。今まで、あの義勇軍が出来た頃から今まで、自分たちの意思で離れ離れになったことなんかなかったんだ。それが、雲長の兄者を荊州に残して、兄者と俺、他の奴らで蜀を手に入れたら。そうしたらそこに住むようになるだろう。そうしたら、よっぽどのことがない限りは雲長の兄者とは会えなくなっちまう。
餓鬼っぽい感傷だと分かってるんだ。俺だって、雲長の兄者以外に任せられる奴はいないって理解している。
だけど、頭と心はいっつも一緒とは限んねぇじゃねぇか。
俺に睨み付けられても、諸葛亮は微動だにしない。あんまり笑わないこういう時の諸葛亮は、俺は苦手だった。
「翼徳」
俺の言葉を遮ったのは、兄者の穏やかな、いつもと変わんない声だった。
もうやめろ、という意味が含まれている。
横で雲長の兄者も静かに頷いている。
お前の気持ちは分かっている、とその目が言っていた。
口を閉じて俯いてしまった俺の肩を、諸葛亮が叩いた。
「すいません」
小さく呟く声が聞こえて、涼しい顔が少しだけ歪んだのが見えた。
※
兄者の蜀入りの祝いと、雲長の兄者との別れの宴が同時に行われて、俺はたらふく酒を飲んだ。いつもは雲長兄者がそこら辺にしておけ、と叱ってくるけど、今夜は何も言わなかった。
いつの間にか宴はお開きになっていて、みんなは部屋に引き上げたのか城の中は静かだった。俺は一向に酔えないし眠くもならなくて、酒の入った瓶を片手にフラフラと庭に出た。
酔えなくても体はあっつくなるみたいで、俺は大岩の影に背中を預けてそのひんやりとした感触を楽しんだ。
「翼徳はどうした?」
不意に兄者の声が聞こえて、俺は辺りを見回した。気配からしてどうやら俺が体を預けている大岩の反対側にいるらしかった。声を掛けようと思ったが、少し驚かしてやろう、という悪戯心が湧いてきて、そっと様子を窺うことにした。
「広間に姿がありませんでした。自分の部屋に戻って寝ているのでしょう。あれだけ大酒を食らっていましたし」
雲長の兄者も傍にいたらしい。兄者の声に答えていた。俺は何だか楽しくなってきて、忍び笑った。こうなれば二人とも驚かせてやろう、ともう少し様子を見ていることにした。
「自棄酒かな」
「そうかもしれませんな。あやつは何度も酒で失敗しているくせに、一向に懲りませんな」
「はは、そういうな。お前も今日は大目に見ていたではないか。珍しい」
「それは、まあ。別れるときぐらいは喧嘩になりたくはないですし」
「そうだな」
不意に二人の声が沈んだけど、俺は大して驚かなかった。兄者たちは諸葛亮の案を大人しく受け入れたけど、別れることが寂しいはずかないし、不安もある。
だから、俺は俺自身の気持ちにも正直だったけど、兄者たちの代わりに正直であろうとしただけだ。
それは諸葛亮も分かっていたみたいで、だから謝ったんだろうな、と思う。
「初めてだな」
「ずっと三人一緒でしたから」
「付いてきてくれる同志は増えたが、お前たちは特別だった」
「はい」
今さら口にすることでもないが、と兄者は照れ臭そうに言った。
そうだぜ、兄者、と俺は心の中で答えた。
「それでも不安だと言ったらお前は怒るかな」
「いえ、それは拙者も同じです。兄者の隣に立てないもどかしさをどう表現したら良いか」
「雲長、私は弱いな」
「兄者……」
まるで泣きそうな二人の声に、俺は大声を張り上げた。
「ばっかじゃねぇの!?」
二人は驚いたようで、呆然と大岩の上に飛び乗った俺を見上げていた。
「いいじゃん、不安で。あったりまえじゃねぇか。嫌なら嫌っていえばいい。それで変わらなくても、嫌って口にしたことで、じゃあどうしようって前に進める力に変えちまえば。黙ってたら自分の中で腐っちまうだけだ」
「翼徳」
「翼徳、お前」
「だけどな、俺たちは特別なんだろう。少し離れ離れになったって、平気だろう。どっかで繋がってる。雲長の兄者が曹操に降ったって戻ってきた。兄者がずっとずっと決まった領地が持てなくても俺たちは見捨てなかった。それに比べれば、今度はすげぇじゃねぇか。前に進むために、自分たちから別れるんだ。それって凄いことだろう?」
二人が笑った。
「参った参った」
「翼徳が一番良く理解しているな」
ちょいちょい、と二人に手招きされて、俺は岩から降りた。それからあっと思う間もなく二人に抱き締められた。
「な、何だよ」
「いいからいいから」
「大人しくしていろ」
駄目だろう、そんなことしたら。泣きたくなっちまう。暴れようとしたけど、二人が笑いながら泣いていたので俺まで泣きたくなっちまって。
結局その夜は三人して抱き合ったまま泣いていた。おかけでその後は良く眠れたけどな。
※
「ありがとうございます」
出立の朝、唐突に諸葛亮に礼を言われた。
「何だよ、急に」
「殿と関羽殿のお顔がすっきりしています。貴方のおかげでしょう」
「別にお前に礼を言われることじゃねぇよ。俺は俺に正直にしただけだ」
「それが、貴方の善いところですから」
にっこり笑った諸葛亮の顔が眩しくて、俺はそっぽを向いた。
「そ、そうかよ」
照れ臭くなって、その場を立ち去ろうとしたが、ふと思い付いて言った。
「お前も、少し笑ったほうがいいぜ。お前の善いところが出るからよ」
諸葛亮は少し呆けた顔をしてから、その顔がなぜか赤くなった。
「ご助言、参考にさせておきます」
「おう!」
頷いて、俺は兄者たちの下へ駆けていった。
おしまい
***
三国志最強萌えキャラ、張飛たん(笑)。三人が別れるときってやっぱり涙涙、だったのか、それともこれぐらいでは絆は揺るがない、とか思って平気だったのか。今回は前者でどうぞ。
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