うふふふっ、今日も夕方まで爆睡。
本当にダメダメです。
それでも何とか通販を開始してみました。気になる方はどうぞお気軽にご利用くださいませ。今回からはちょっと送料を取ることにしまして、色々調べたかったのですが、休みの予定がこんなダメっぷりだったので……。かといって、来週以降の休みのめどがさっぱり分からないので、見切り発車ですが。
本自体の価格が安いので、あまり送料を取りたくなかったのですが(送料が本より高くなる場合もある……)、前回結構ご利用があったので、送料負担も馬鹿にならない、ということで、ご了承お願いします。
さてさて、そんなダメ人間が送る、突如始まったお題小話。
しかして、どうして主従といえば曹操さまと許チョなのか。
う~ん、たぶん私の好きな関劉や水魚、はたまた遁走などは、主従というよりはもっと違うもの、という気がしてならないからかもしれません。
ま、もちろんただの趣味ってのが大部分ですが(笑)。
そんなわけで、第二弾行きます。
「呼称」
昔から、おかしなあだ名で呼ばれることは多かった。
「木偶の坊」
「昼行灯」
「案山子」
「遅鈍」
上げれば切りがないが、とにかく他の人間から見れば、どうやら自分は何を考えているのか分からない、大きな物体に見えるらしい。
そんなことはないのだが、確かに自分の思っていることを伝えることは苦手であるし、努力して伝えようとしても、誰も最後までまともに聞いていくれるものはいなかった。
だから何時しか言葉ではなく、行動で意思を示すようになった。幸いにも、腕っ節は口ほどに弱くなく、次第に周りの人間はそれを認めるようになった。
それでも、やはり言葉数が少ないのは不気味に思うらしく、自分では正当な理由があって力を振るっても、それが突然の行動に見えるらしく、最後に付いたあだ名は、
「虎痴」
だった。
普段は大人しくぼんやりしているが、ひとたび何かがあれば、虎が暴れだしたように手が付けられなくなる、という意味らしい。
それもあまり嬉しくはないあだ名ではあったが、それを不満だ、と口にするほど器用でもなく、甘受していた。
ただ時折、からかう様に何度も何度も呼ぶ相手には、力で不満を表していた。それは曹操の下に付いてからも変わらずに、先日も同僚を殴り倒したばかりだった。
「なあ、許チョ。そのように黙っていては分からんぞ。何か申すことはないのか?」
呆れたように自分を見下ろす曹操へ、床を見つめたまま許チョは無言で答えた。
分かっている。いくら自分が口を開こうとも、上手く説明は出来ないし、誤解を生むだけだ。これまでの経験から、下手に理由を語るよりは相手に判断を任せたほうがマシなのだ。
「私も、自分の親衛隊が問題ばかり起こしていると困る。特にお前は人一倍力もあるしな。聞いたか? お前に殴り倒された奴らは一月は寝ていないといけないらしい」
もうすぐ戦が始まるというのに、貴重な戦力が、とため息まじりに曹操が呟く。
「申し訳ありません」
決して曹操を困らせるつもりはなかったのだが、結果的にはそうなってしまったのだ。それだけは辛かった。
「謝るぐらいなら、理由を知りたいものだ」
「申し訳ありません」
それこそ、昔付いていたあだ名のように、同じ言葉を繰り返す痴者のようだった。
「やれやれ……」
すっかり呆れ切ったらしい曹操は、三日間の謹慎を言い渡して去っていった。曹操の足音が遠ざかるまで、身動き一つしなかった。
それがほんの何月か前のこと。
決して倒れることはない、と信じていた人の体が、今は痩せ細って自分に凭れかかっている。それを支える自分の腕も、だいぶ力が抜けかかってる。しかし、完全にそれが抜けることはないだろう。
支えるべき人がそこにいるのだ。その体温が、呼吸が確かなうちは、決して自分が先に倒れることはない。
燃え上がった船から脱出し、援軍のある江陵を目指している。
追っ手はその息遣いが聞こえそうな距離まで迫っているはずだ。
「虎痴」
突然、言葉を発する力さえなくなっている、と思っていた人から、そのあだ名が呼ばれた。
「虎痴、そう呼んではいかんか」
「いえ、丞相」
「虎痴、と呼ばれることを嫌っていた、と聞くが」
こんなときだというのに、曹操の声はどこか楽しそうだ。
「そのようなことは」
「だが、あのときお前が暴れたのは、散々にからかわれたからだ、と聞いている」
「知っておいででしたか」
何ヶ月も前のことを持ち出されて、戸惑いを隠せない。
「虎痴、悪い名ではない、と私は思う」
「はっ」
そうだ。
曹操に言われると、なぜかそういう気になる。
それはとても不思議だった。
「これからは、私だけがお前をそう呼ぶ。それなら構わないか?」
「はい」
力が失われていたはずの腕に力が籠もった。
死地を抜け出すための案を、曹操に告げた……。
終
***
後は北方三国志でお楽しみください(笑)。
えっと、やはり呼称、といえばこの話、と思い、ひっさしぶりに北方の二人に登場してもらいました。二度もネタに使ってごめんなさい。
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