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いつでも腐女子日和

腐女子な管理人が送る、腐女子発言多々の日々のつれづれ。

ふらふらしております

いえ、体調のことではなく、ですね。
ただいま、四本、サイト用の新作と交地あわせの原稿が進行しているのですが、相変わらずの集中力のなさで(笑)。
あっちを2、3行書いてみた、と思ったら、こっちの話を少し進めてみたり、そうかと思えばそっちを覗いてみたり。
果てにはちょっと飽きて、ネットを見たり、サイト改装の手直しをしてみたり。
全くどうしようもない有様です。
ま、それでもぼちぼち進んでいますが。今月末までに出来るのか!?
来月はシヴァイやらコメ先生やらの命日が待っているし、交地の締め切りが迫るし、で。何とか今月中にめどをつけたいところです。

では、そんな中でもお題はこなします。




 「物の貸し借り」


「翼徳、お前拙者の香油を知らんか」

 関羽に尋ねられて、張飛は「あぁん?」と振り返る。
 自慢の頬髯に艶がないことが気になるのか、関羽はしきりに髯を撫で弄っていた。

「知らねぇな」
「お前が勝手に持ち出したのではないのか?」
「はぁっ? そんなわけないだろう」

 張飛は呆れ返り、蛇矛に向き直ってその刃先に映っている自分の顎鬚を引っ張りながら、顔をしかめた。ちらり、とその映り込んでいる自分の後ろで腕を組んでいる関羽へ、視線を走らせた。

「最近、そのように鬚を気にしているだろう。この間も、拙者の香油を、いいな、と言っていたではないか」
「あのな、いくら俺でも、人のものを勝手に使うはずないだろう?」
「それはどうだ? この間は拙者の飯を食べてしまったではないか」
「あれは、だから謝っただろう。てっきりいらない、と思ったから、もったいない、と思って食べただけだ」
「そうやって、お前はがさつであるから、人の物を持ち出して、断るのを忘れているだとか、返すのを忘れている、などありそうではないか」
「いい加減にしろよ!」

 振り返り、張飛は関羽を睨む。

「すぅぐそうやって俺の悪口ばっかり言うけどよ、兄者だって偉そうに説教を垂れるし、すぐに怒るし。結構大雑把だし。案外、香油だってどこかに落としただけかも知んねぇだろ。よく探したのかよ」
「拙者のどこが大雑把だというのだ」

 むっとして聞き返す関羽の鼻先に、張飛は指を突き付ける。

「この間、俺の具足が濡れていたのだって、実は雲長の兄者のせいじゃねぇのか?」
「まだ疑っていたのか。あれは拙者ではない、と言っているだろう」
「おかげであの日は、俺は出陣できなくて手柄を立て損なったんだかんな」
「仕方なかろう。具足が濡れていたのだって、お前がずさんな管理をしていたからではないのか」
「じゃあ俺が悪いって言うのかよ!」
「そうは言っていない。しかし、お前がしっかりと管理をしていれば、起こらなかったのではないか、と言っている」
「やっぱり俺が悪いって言ってんじゃん!」

 言い争ううちに、二人は感情が昂ぶって来たのか、その体に似合った大声で怒鳴り合い始めた。

「おいおい、何をやっている。外までお前たちの声が丸聞こえだぞ」

 そこへ呆れた顔で劉備が幕舎に入ってきた。

「兄者、翼徳がですな」
「兄者、だって雲長の兄者がさ」

 その大音声のまま話しかけられた劉備は、慌てて耳を塞いだ。

「ちょっと待て。兄弟喧嘩なら思う存分やったらいいが、ここではやめてくれ。皆の士気に関わるだろう」
「しかし兄者」
「だからって兄者」
「うるさいうるさい。分かったから外へ行け」

 二人の喧嘩はいつものこと、と知っている劉備は無下に追いやろうとするが、ああ、そうだ、と懐へ手を伸ばした。

「雲長、これ使わせてもらったぞ。断るつもりだったのが、いなくてな。黙って借りて悪かった」

 差し出されたのは、関羽の探していた香油が入った小瓶だ。
 気まずそうにする関羽を、張飛がじろり、と睨み付ける。それを劉備が不思議そうに眺める。

「兄者、困ります。人の物を……」
「ああ、すまん。もしかして探したか? いや、雲長の香油はいつも使い心地が良さそうでな。私もほら、鬚が揃い始めただろう? ちょっと使ってみたくなったのだ。しかし駄目じゃないか、雲長。牀の隅に落ちていたぞ」

 朗らかに詫びれた様子も無く、劉備は言う。さらに、劉備は何かを思い出したのか、手を打った。

「そうだ、後は遅くなったが、翼徳、これを渡しておくぞ」

 幕舎の隅から、劉備は何を引っ張り出してくる。

「これ、具足じゃねぇか」

 渡された張飛は、それを見て言う。

「この間、丁度自分の具足を汚してしまって、代わりの具足を探していたら、お前のが目に付いて。借りたはいいが、ちょっと濡らしてしまってな。代わりの履を作ったから、お詫びだ」

 すまん、と手を合わせる劉備は、しかし、と続ける。

「あんなところに放り出しておくとは、管理がなっていないな。あれでは盗られてしまうぞ。私だったから良かったものの」

 すぅっと、関羽と張飛の息が吸い込まれた。

「……?」

 小首を傾げる劉備に、二人は今まで喧嘩をしていたとは思えぬほど息を揃えて、

『兄者~~!!』

 と怒鳴った。
 その後しばらく、劉備の耳が遠くなったのは、仕方がないだろう。

 親しき仲にも礼儀あり。どうか努々お忘れなきよう。



 おしまい



 ***

 ありがちな、そんなエピソード。兄弟ってこんな感じですよ(笑)。

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