といわけで、お題を載せにきました。
あとついでに、猛将伝の蜀部分をクリアしたので、ネタバレを以下反転で。
馬岱のステージあるかなあ、と期待していたけど、なかったのは残念、しかし、代わりに2ステージ分、救援に駆けつけるとき、必ず魏延と一緒に出てきたり、最初から同じステージに居るとき(五丈原)は一緒に行動していたり、なに、この魏延&馬岱押しありがとうございます、でした。あと、最後の赤兎ステージ、楽しかった。ああいうの好き~。蜀の女の子勢かわいいよね~、三人とも大好き。あと銀塀ちゃんの相変わらずの怪力ネタが。蜀三人と、呉のイケメンどころが揃っていると、学園衣装で再現すると、きっと完全に学校帰りで、誰かが落し物したとき、陸遜が声掛けたらナンパだって勘違いされて、押し問答、みたいな光景になること請け合い。魏の猛将伝まで出来るかなあ。
また原稿落ち着いたらやると思います。
さて、お題ですが、今回はそういえば切なくなかった。
ほのぼので、魏延&馬岱です。
折り畳みよりどうぞ。
「馬岱と魏延の場合」
風変わりな男が居るなあ、と。
馬岱の魏延に対する初めの印象はそんなものだった。
仮面を被って、しゃべる言葉は朴訥を通り越して、誰だったか「まどろっこしい!」と言っていた。本人もしゃべることが得意でないことは承知しているのか、誰かが話しかけてようやく口を開く、という程度だ。
「魏延殿、よろしくね~」
従兄の馬超とともに劉備に降り、挨拶をしたときも、差し出した手をしばらく見つめたあと、黙って握り返してきた。
宴のときも、隅に座って一人で盃を傾けている。時々、仲の良いらしい黄忠が隣に居るときもあるが、大抵一人だ。
だから普段の彼の周りはとても静かで穏やかだ。
なのに、これがひとたび戦に赴く、となれば別人だ。
魏延を枝か何かと勘違いした小鳥が、彼の発した闘気に当てられて急いで肩から離れていく。
そのぐらいの豹変ぶりだった。
戦場で、魏延の支援をするように頼まれた。駆け寄ると、仮面の奥の目がちらり、と見やった。味方のはずなのに、殺されるかと勘違いしてしまうような殺気が灯っている。
「俺、味方だよお」
思わず手を振って、主張した。
「知ッテル……」
短い答えとともに、魏延は一人で駆け出した。
「ちょい、待ってよお」
急いで追いかける。
「どうして君ってば、いつも一人で居ようとするのさ。一人は寂しいよお」
「……寂シイ?」
「そう、寂しい」
左右の敵を倒しながら、二人は戦場を駆け抜ける。魏延の戦い方は一直線で、迷いがない。従兄に良く似ていて、馬岱は初めて戦場を共にするというのに、こちらも迷いなく呼吸を合わせられる。
「良ク……分カラヌ」
「こう、胸の奥がきゅうって苦しくなって、泣きたくなるような、そんな感じ」
「……分カラヌ」
「そっかあ。俺は駄目だなあ」
魏延の脇から迫っていた敵を、筆から生み出した餓鬼で踏鞴を踏ませ、魏延がとどめを刺す。
「ソレ……オ前、弱イカラ」
「あはは、弱いかあ、そうだね、そうかもね」
馬岱の前に飛び出した三人は、魏延に吹き飛ばされた。
「でもねえ、一人でやれることも限界があるし、一人っきりの人間も、弱いんだよ、魏延殿」
「……」
また、殺気の灯った視線に射抜かれるが、今度は分かっているので構えができた。
「そう思わない?」
射掛けられた矢を、互いの肩越しに払い、背中合わせになり、降り注ぐ矢を次々と切り落としていった。
「俺、なんだか君を放っておけなくなっちゃったよお」
寂しいのは嫌いだ。昔から嫌いだ。両親が早くに亡くなり、馬超が引っ張りまわしてくれなければ、馬岱は寂しさに押し潰されていただろう。
戦場を一人で駆ける魏延に、まるで寂しさを戦で誤魔化しているようにも見えた。
大きなお世話かなあ。
思いながらも、墨の固まりは敵を潰していく。
「君の、友だちになってもいいかな、魏延殿?」
「友ダチ……?」
「そう、友だち……とぉ」
馬岱の脇腹を魏延の得物がすり抜ける。慌てた拍子に帽子が飛んだ。背後に迫った敵を魏延が倒し、あらかた片付いた。
「戦イデ……変ナコト言ウカラダ」
怒ったような口振りで、魏延は刃を肩へ担いだ。
「ごめん」
謝辞を口にしながら落ちてしまった帽子を拾おうとしたが、先に魏延の腕が伸び、取り上げた。
ぽふり、と頭に被せてくれたが、勢いが良すぎて前が塞がる。
「うわっぷ」
「別ニ……構ワン」
慌てた馬岱は、魏延の呟きを聞き逃す。
「え? なに、いま何か言った、魏延?」
「……」
戦が終わったからか、また寡黙な男に戻ってしまったようだ。だが、心なしか仮面の奥が嬉しそうに見えた。
「なに、いま何か言ったでしょう!」
馬岱は必死で聞き逃してしまった言葉を取り返そうと躍起になる。
「……」
「ねえ、魏延ってば!」
「オ前……煩イ」
直したばかりの帽子を引っ張られ、また深く被らされてしまう。
「ちょい、やめてってば!」
そんな様子を遠くから眺めていた黄忠と張飛は、なにじゃれてんだ、あいつら、と呆れている。
俺ねえ、君が素顔でいられる場でありたいって思っているんだけど、どうかなあ。
許してくれるかなあ、魏延?
あんなに楽しそうにしている魏延を見るのは初めてじゃの。
そうなのか?
そんな黄忠と張飛の声が風に乗って聞こえてきた。
おしまい
お題「彼が素顔でいられる場でありたい」より
どちらにとっても素顔で居られる場所であって欲しいな。
という願いを込めて。
[1回]
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