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いつでも腐女子日和

腐女子な管理人が送る、腐女子発言多々の日々のつれづれ。

ふ~む。

今日はネタが久しぶりにありません。
まあ、音信不通だった弟がようやく、というか父親にアパートを強襲され、帰省している、というぐらいでしょうか。弟が帰って来るとパソコンもTVも使えなくなるので、今日は何もしていません。

そんなわけで、お題を消化してみようかな。

第三弾です。





「口ごたえ」

 そもそも、出会ったときの印象が、いや、出会ったときの状況が悪かったのだ。
 こちらは鐘泥棒を追い駆けていて必死だったし、向こうはそんなこちらの状況など省みずに訳の分からないことをしゃべっている。自分の力が人より優れていることを知っていた自分は、そこに関係のない人間がいることが邪魔だった。
 うるさく囀る鳥は閉じ込めて殺してしまえ、と鐘を持ち上げて押し込めた。一仕事を終えて程よい疲労感に任せて荷車の上で寝てしまうころには、そのうるさい鳥のことなど忘れていた。
 しかし鳥は生き延びて、それどころか自分を恐れることなく一喝した。

(違うんだ、こいつは。雀なんかじゃねえ。大鷲だ。いんや、もしかしたら昔和尚から聞いた竜って生き物かもしれねえ)

 そう息を呑んだのもつかの間、また囀り始めた鳥の声は意味がよく分からず、しかし気が付くとその囀りに従っている自分がいて、むぅむぅと唸るのだった。

   ※

「おぉい、許チョ~!」

 薄暗い中で、自分を呼ぶ声に振り返る。本当は振り返る前から、その人が近付いていることは知っていた。何せ目立つ人だ。何より、自分には目を瞑ってもその人のいる場所が分かる。

(眩しいだなあ)

 ちょっとだけ目を細めて、その人を目の中へ捉える。あの頃と変わらずに、無邪気に大きく手を振っている姿を見ると、囀る雀を思わせるのに、その眩しさは決してそれではなく。

「今日はお前、非番だろ」

 駆け寄ってきたその人は、にかっと笑ってみせる。身辺警護を任されている自分が休みのときぐらいは、なるべく宮廷から出て欲しくないのだが、この空を駆け回ることが大好きな人に通じるはずがない。

「ちょっと付き合え」
「いいけども、それならおいらが休みじゃないときにすればいいじゃねえか」

 いつものように、一言付け加えてしまう。決してしゃべるのが好き、というわけではないのだが、なぜかこの人を前にすると色々話してしまうらしい。

「そうすれば、おいらは絶対に付いていくんだしよ」
「それじゃあ意味がない」

 呆れたように、しかし大きく腕を広げる。その腕を今度は真っ直ぐに鼻先に突きつけてくる。

「お前は真面目だから、警護中は俺を自由にはさせんだろ。だから、今がいい。お前は俺の親衛隊ではなく、昔から俺の傍にいた友人として付いてくるんだ」

 その指先にちょっとだけ怯み、それでも「友人」という言葉に少しばかり照れる。膨れながら、口ごたえだ。

「そんでも、危ない目には合わせないだ。あんたはおいらにとって大事な人だからな」
「おう!」

 天下一品の笑顔を浮かべて、その人は自分の肩を叩く。

「それで、どこへ行くんだ?」
「月」

 腕は真っ直ぐ上を指す。

「月を見に行こう。今日は丸い月が昇る日だからな」
「ああ、今日はそいつの当番かあ」
「そうだな、そいつの出番だ」

 自分がそう言うと、なぜかにやにやするその人の顔が分からずに、ちょっとだけ首を傾ける。

「何か、嫌な顔だ。厭らしい狸みたいな顔だ」
「そんなことはないぞ。月はたくさんある。交互に上れば疲れんからな」

 はっはっは、と大笑いしながらずんずんと歩いていく背中を、自分は何だか釈然としない気分で追い駆ける。

「月は、でも、あんたみたいだな」

 雀だったり、竜だったり、狸だったり。
 幾つも姿を隠し持っている。
 それでも、天下の目だけはいつでもキラキラと輝いている。
 だからきっと自分はこの背中を見失わずについていけるのだ。

「殿、おいらから離れんな!」
「なら、早く追い駆けてこい、許チョ!」

 東の空に、ぽっかりまあるいお月様。



 おしまい



 ***

 はい、蒼天でした! 相変わらず蒼天は難しいです。強烈な個性を放っているので、イメージを損なわないようにするので精一杯です。
 蒼天の二人も大好きですね~vv

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